寄稿 - 極右の時代? 参議院選挙に見る日本政局

  7月23日、統一ニュースに韓統連議長の寄稿が掲載されました。翻訳文を紹介します。


寄稿

極右の時代?参議院選挙に見る日本政局

韓統連 議長 孫亨根


「選挙に差別を利用するな」ピケットを掲げ抗議する市民

 7月20日に実施された日本の参議院選挙を通じて、与党が過半数を割る中で、極右排外主義の参政党が大きく議員数を増大させた。

 今回の選挙で参議院での国会議員数を2議席から15議席に増やした参政党が、いくつかある極右政党の中心となった。今回の選挙によって日本政界で初めて極右政党が大きく台頭したが、それは今後日本政治と社会を右側に牽引する非常にに危険な存在となるだろう。参政党の動向を分析し、今後の日本政局を展望する。


●選挙運動後半での神谷宗幣代表の問題発言について

 参政党の神谷代表は7月12日の街頭演説で治安維持法を(1925年~1945年)肯定する発言を行い、18日の街頭演説で露骨な民族差別発言を行った。この発言内容を紹介し、それに対する見解を明らかにする。


7月12日の神谷発言(要約)

「(戦前に)日本も共産主義がはびこらないように治安維持法を作ったでしょ。悪法だというけれど、それは共産主義者にとっては悪法でしょうね。共産主義を取り締まるためのものですから。だって彼らは皇室を打倒し、日本の国体を変えようとしていたからです」


7月18日の神谷発言(要約)

「何度でも言いますが、参政党はまだできて5年、党で理想を掲げただけなのに、(周辺の人々が)それをね、あれが足りない、これが足りない、憲法わかってない、(参政党を)アホだ、バカだ、チョンだと(言う)」


●治安維持法肯定発言に対する評価

 神谷代表は、共産主義を防ぐために治安維持法が必要だったとしているが、同法は共産主義者だけでなく民主主義や朝鮮独立運動などにも弾圧の対象を拡大し、ついには軍部に対する批判や反戦活動まで弾圧の対象にした。共産主義者、朝鮮独立運動家、反戦活動家、学者、芸術家、文化人、宗教家など同法違反容疑で逮捕投獄された各界各層人士は数10万人と言われており、そのうち約2000人が拷問死、病死したと言われている。見逃せないのは、治安維持法は日本国内だけでなく朝鮮にも適用されたことである。同法違反で死刑判決を受けた政治犯が日本では皆無であったが、朝鮮では50名であったように、日帝は治安維持法によって日本人より朝鮮人に対してより苛酷な弾圧を行った。

 神谷代表は、1945年8・15以前の天皇制統治と軍国主義、ファショ弾圧に対して、否定どころか、肯定していると思われる。神谷代表は、日本人と朝鮮人の多くがファショ弾圧を受けたことを知らないか、あるいは知らないふりをしている。いずれにしても天皇制(国体)を傷つける行為は処罰されて当然だという考えを持つ神谷代表が天皇制支持者であることは間違いない。

選挙期間中に配布された宣伝ビラ

 神谷代表は、スーパー治安法の1つである「スパイ防止法」の制定を強く主張している。参政党が権力により接近する場合、「治安維持法」や「スパイ防止法」のような「新たな治安法」が制定される危険性が非常に高い。「新たな治安法」が制定されるならば、弾圧の対象は政府に反対する人々と共に、8・15以前の歴史が示しているように、在日朝鮮人(韓国人)になるだろう。


●民族差別発言に対する評価

 日本の差別者は日帝時代から今まで「アホ、バカ、チョン」とよく言うが、この場合の「チョン」は日本語発音「チョーセンジン」に由来し、朝鮮人のことを侮辱を込めて短く「チョン」と言った。「チョン」は「朝鮮人は皆、バカで能力がない」という意味で使う民族差別の言葉だ。

 神谷代表は、選挙日の2日前という非常に重要な時期にこの露骨な差別用語を公開の場であえて発言したのである。彼は国民に排外主義を煽ることで参議院選挙が決定的に自分に有利になると計算したのだろう。それは、彼自身が持つ外主義の根深さを示している。今回の選挙で、参政党と争うように他の極右政党も排外主義を助長する発言を行った。選挙の後遺症で差別語が蔓延し、排外主義が拡大するだろう。排外主義の震源である神谷代表と参政党に反対する運動の強化が求められる。


●参政党の台頭と日本政局の展望

△排外主義拡大の危険性

 神谷代表は、選挙後のインタビューで外国人に対する「生活保護」からの除外を否定しなかった。

 参政党は排外主義を打ち出すことで参議院選挙で自らの躍進を実現したので、今後も排外主義路線を強化していくだろう。また参政党は政権に近づくほど、様々分野で外国人差別を法制化する機会を探るだろう。外国人差別の法制化に反対する運動の準備を怠ってはならない。

△平和憲法存続の危機

 参議院選挙で憲法改悪派の自民党が議員数を減らしたが、その穴を埋めて余りある議席を参政党など極右政党が埋めた。結果、全体で見れば改憲を主張する議員数がむしろ増大した。今後、参政党など極右政党が扇動する形で憲法改悪の動きが加速化し、改憲内容もより劣悪化する可能性が高い。護憲運動の一層の強化が求められる。

△自民党との連携の可能性

 今回の選挙で与党の自民党と公明党が共に議員数を減らし、衆議院と共に参議院でも与小野大となった。自民党は極右政党に協力を求めざるを得ない状況だ。その場合、極右的な、あるいは排外主義的な政策や立法が現実化する危険性がより高まる。日本政治の極右化の危機は目前に迫ったといって過言ではない。

△結論

 日本の場合は8・15以前に軍国主義とファッショ弾圧が猛威をふるった歴史があるが、それは侵略戦争の道でもあった。参政党をはじめ極右排外主義の台頭は、日本の戦争体制を日本社会の中から進めていく極めて危険な動きであり、全力で反対しなければならない。

△極右排外主義の台頭を阻止しよう

 選挙期間中に、極右排外主義に反対する緊急の運動が広まり、参政党などの街頭集会に排外主義に反対するプラカードを掲げるなどの運動を起こした。また排外主義に反対する署名運動に1000以上の団体が呼応した。市民と労働者により自主的な運動は排外主義に打撃を加えると同時に、多くの人々に勇気と希望を与えた。いくつかの進歩政党も選挙運動の中で極右排外主義に強く反対する声を上げた。進歩政党は選挙後の記者会見で、排外主義に反対する運動を強化する方針を示している。

 極右排外主義反対、民主主義死守、平和憲法守護、戦争反対運動の強化のための運動をより一層強化しなければならない。


2025年7月22日


極右の時代?参議院選挙に見る日本政局(統一ニュース)


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