韓国総選挙 野党「共に民主党」圧勝 与党「国民の力」惨敗 韓統連が見解文を発表
(2024年4月5日)
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李在明・民主党代表と曺国・祖国革新党代表 |
4月10日に行われた第22代総選挙で、定数300議席のうち、与党「国民の力」は108議席しか獲得できずに惨敗する一方、野党が3分の2に迫る議席を獲得し圧勝した。
これに対し15日、在日韓国民主統一連合(孫亨根議長)が、見解「総選挙の結果と特徴」を発表した。全文を紹介する。
韓国の第22代総選挙が4月10日行われた。投票率は67%で歴代最高であった(前回2020年選挙より0.8%上昇)。最大野党「共に民主党」は過半数を大きく上回る議席を獲得し、少数与党「国民の力」は現有議席割れとなった。今回の総選挙は3年の任期を残す尹大統領の中間評価との位置づけであったが、野党側の「政権審判」に多くの有権者が賛同した。
定数300議席のうち、民主党は175議席(地域区161・比例14)を獲得。国民の力は108議席(地域区90・比例18)だった。反尹を掲げて総選挙前に創党された曺国(チョ・グク)元法相が率いる「祖国革新党」は比例12議席を獲得した。残る5議席は新党などが進出した。民主党など野党は、192議席となり、「与小野大」の格差が更に拡大した形だ。
選挙結果を踏まえ、11日、尹錫悦大統領は「総選挙での国民の意志を謙虚に受け止め、国政を刷新する。経済と民生のために最善を尽くす」と表明した。共に民主党の李在明代表は「有権者の選択は尹政権に対する審判だ。より良い世の中をつくってくれという責任を課されたと思う」と述べた。
選挙戦で民主党をはじめ野党は、尹政権と国民の力に対し、民生軽視、尹大統領自身と夫人金ゴンヒ氏の不正(高速道路の路線変更・株価操作・高級バック授受など)、人命救出活動中の海兵隊員の死亡事件、梨泰院惨事、与党候補の親日的な言動などのイシューを中心に痛烈な政権批判を行いながら、「政権審判」を訴えた。また民主党は比例区選挙では進歩党、新進歩連合、市民社会団体と共に統一候補名簿方式で臨み、14名を当選させた。そのうち6名は上記3勢力がそれぞれ2名づつ議席を獲得した。祖国革新党は、民主党との競合を避けるために比例区だけに候補を立てた。尹政権に反対する主張をより強烈、鮮明に打ち出すことで有権者の熱い支持を受け、新党でありながら12議席獲得という大躍進を実現した。このように民主党と民主進歩勢力は反尹政権の旗のもとに団結して選挙に臨み、民主進歩の躍進を実現させた。
一方、緑色正義党(旧・正義党)は、尹政権批判の不徹底や統一候補名簿方式拒否などの影響なのか、獲得議席0に終わった。李ナギョン氏(元民主党代表)の「新しい未来」は1議席、李ジュンソク(元「国民の力」代表)の改革新党は3議席を獲得したが、目標の獲得数には遠く及ばず、両党の与野2大政党に対抗する第3勢力構築の目論見は失敗した。
李在明民主党代表は、総選挙を通じて指導力を存分に発揮し、今回の総選挙での李在明系議員の多数当選もあいまって、党内基盤をいっそう強化した。
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◆与党に対する厳しい審判
尹政権に対する厳しい審判が下されたことが、選挙結果の最も重要な特徴である。国民から無能、無責任、不正腐敗、反民主、反民族という審判を受けた。任期残り3年の尹政権は深刻な危機に直面することになった。李在明代表を中心にした民主党は政権奪還に向けた基盤を固めたといえる。
選挙において民主・改革・進歩勢力の間で連合連帯が実現し、少数ながら進歩系政党と市民社会団体が院内に進出した。新たな挑戦が始まったと言える。
◆今後の政局の展望
国会で与党がより劣勢となった尹政権の前途は真っ暗である。総選挙で噴出したように、尹政権に対する国民の怒りは計り知れないものがある。さらに今後、尹政権は野党の協力なしでは国会で何もできない。2年間、尹大統領は梨泰院惨事・真相究明の特検法などに対し大統領拒否権を乱発することで切り抜けてきたが、今後は拒否権の乱発は容易ではない。尹政権には野党との妥協や協商で道を開く方法もあるが、意志の不通と硬直で貫かれた2年間の彼の統治スタイルをみれば、その可能性は小さい。尹大統領が数々の重大イシューにおいて、国民と野党の声に耳を塞ぎ続ける場合、尹政権に対する国民の怒りが再び爆発し、任期3年を待たずに政局は重大事態を迎えることもありえる。4月13日に開催されたキャンドル行動では「尹錫悦弾劾」のスローガンが前面に掲げられたが、今後示される各界各層の闘争方向が注目されるところだ。
任期満了や本人の自主辞任以外に、大統領を辞任させる方法は、弾劾訴追と、大統領任期短縮を含めた憲法改定という方法がある。いずれの場合も前提として国会定数の3分2以上の同意が必要である。今回の選挙で定数300のうち国民の力が108議席となったので、国民の力から議員8人程度の造反が出れば、それらは可能となる。総選挙の結果を受けて、院内外で各界各層で尹錫悦政権の退陣を求める運動はより一層激化していくのは必至だ。
◆われわれの課題
総選挙で尹錫悦審判が成し遂げられたことで、尹政権退陣と政権交代の明確な展望がきり開かれた。民衆の闘いが大きく前進したことを確認しつつ、朝鮮半島と東アジアの平和を実現するうえで、留意しなければならない点を確認しておきたい。
尹政権は出帆以来、外交・安保政策において従米、親日・韓米日軍事同盟構築の道を突進してきた。
国際秩序が米国の一極支配から多極化へと変化するなかで、韓国は、過去と現在の帝国主義を清算・排撃し、特に外交・軍事面において自主性を発揮しなければならない状況にある。自主なくして韓国の平和と繁栄はない。しかし2年前に出帆した尹錫悦政権は多極化の流れに逆行し、従米を深化させながら北朝鮮・中国・ロシアを敵視、包囲、けん制する非常に偏向した外交・安保政策を展開してきた。特に尹政権の対北敵視政策の強化によって、朝鮮半島に戦雲がただよっている。
選挙期間中も憂慮する動きがあった。4月初めに済州島周辺で韓米日3か国の合同空軍演習に続いて、4月11、12日には海軍の合同軍事演習が行われた。4月10日にはワシントンで米日首脳会談が行われ、米日同盟の強化と韓米日軍事協力がより一層進展した。
4月11日、選挙敗北の責任を負うとして、大統領室のほとんどのスタッフが辞任した。しかし、尹大統領は安保関連のスタッフだけは辞任させないという。これは、総選挙での敗北にもかかわらず、尹大統領が残り任期3年間、外交・安保政策だけは絶対に変更しないという堅い意志表示に見える。一方で尹政権のもとで韓米日軍事同盟の構築をもくろむ米日両政府は、引き続き尹大統領の側に立ち続けるだろう。
今後、民主党が政局の主導権を握り、政権奪回への動きが強まるなかで、民主党に対する評価が必要だ。4年前の第21代総選挙でも民主党が180議席を獲得し勝利した。当時、文在寅大統領のもと民主党が大統領府とともに立法府を掌握したことで、平和実現と南北関係改善に向けて、期待が膨らんだ。しかし文政権は米国の干渉に屈して、総選挙後も共同宣言を履行しなかった。むしろ自国の軍拡に固執した。
民主党は反保守と親米という2面性をもっている。民主党が1945年8・15直後に結成された親米・反共の韓民党をルーツにしていることを忘れてはならない。今回の総選挙で、市民社会団体が比例候補者名簿に反米志向の強い2名の候補者を登録しようとしたが、民主党はこれに反対した。結局、市民社会団体は反尹運動を最優先することになり、2名の反米候補者を辞退させた。
民主党の基本路線は、韓米同盟強化であると同時に、日本の軍事大国化と歴史修正主義には反対の立場である。現在、米国は韓国の政権に韓米日軍事同盟構築のために韓国が戦後補償を放棄し、韓日軍事協力を促進するように圧力を加えている。したがって今後、民主党が再執権に接近するほど、米国と民主党との間に軋みが生じざるをえない。
米国の内政干渉を排撃する闘争課題が、今まで以上に浮上してくるだろう。総選挙の結果に励まされながらも、院内外と国際社会における反米自主・反戦平和運動のより一層の強化が切実である。
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